こうした施設でコンタクトレンズを購入した人の70%以上は、処方後に定期検査を受けておらずコンタクトレンズ使用上の正しい指導や教育が行われていない、目の異常が起こった場合にも十分な処方を受けていないということが報告されました。
コンタクトレンズの種類別に眼障害の発生をみると、ソフトコンタクトレンズによるものが70%以上で、安全と考えられているディスポーザブルレンズや頻回交換レンズの障害も数多く報告されました。眼障害を起こす原因として、長時間の装用、不適切なレンズの洗浄や消毒など、使用者の装用やケアに関することが問題になりました。平成12年7月26日に厚生省(現在の厚生労働省)はコンタクトレンズが原因の眼障害が多発しているとして「医薬品・医療用具等安全性情報161号」をだしコンタクトレンズ使用上の注意を促しました。
同省が研究対象とした医療機関における1年間の眼科救急外来受診者約2,200人について調べると約210もの人がコンタクトレンズ装用による目の障害を起こしておりコンタクトレンズを装用したままの睡眠など長時間の装用が原因とされるケースが60件以上、消毒・洗浄方法の不適切によるものが40件以上もありました。なかにはディスポーザブルレンズを繰り返して使用し、保存液に用いた水道水のアカントアメーバが増殖したのが原因とみられる角膜潰瘍で、角膜移植が必要となったケースもあります。同省は安全対策として、定期検査に加え、
- レンズの洗浄・保管はレンズケア用精製水を用いる
- レンズを保存液で長期間保管した場合、細菌のおそれがあるため適切な処理を行う
- ディスポーザブルレンズは定められた装用期間を守り、就寝時には外すなどをあげています。
くわしい内容は以下のとおりです。
■実施内容
コンタクトレンズを装用していて、目になんらかの異常が起こったという危害情報が平成5年4月以降、518件よせられている。コンタクトレンズは目の中に入れて使う医療用具であり、安易に取り扱うと重い目の障害も引き起こしかねない。そこでコンタクトレンズの危害の状態と消費者への注意事項をまとめた
■結果・現状
コンタクトレンズ、メガネ、聴診器など「医療用具」の全相談件数に占める危害情報の割合は少ないが、コンタクトレンズに限ってみると危害の割合が非常に高い。性別、年齢別では、20歳代の女性に圧倒的に多い。自覚症状としては、「充血して痛い、異物感がある」など複数の症状を訴えている例が多い。コンタクトレンズの種類にはハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、使い捨てソフトコンタクトレンズがあるが、ソフトタイプに危害の割合が多かった。
■問題点
コンタクトレンズは、医師の診察を受けて購入するのが望ましいが、「医師の診察をすすめられなかった」「自分の目に合わないレンズだった」j「取り扱い方法など説明が不足していた」など購入に際して問題のある場合が多い。また使用者自体が検査をまったく受けないなど、使用者側に問題のある例、さらに、レンズが破損していたなどレンズ自体に問題がある例も少なくない。
■要望内容
◆コンタクトレンズメーカー・販売店に対して・販売店の店員のコンタクトレンズの取り扱い方法や洗浄方法などの説明が不十分だった ため危害を受けている例があるので消費者に納得のいく十分な説明と適切なアフターケアを充実させること。・医師による指示・指導が重要であることを関係者に徹底するとともに、購入者にも十分に説明すること。・販売店によるコンタクトレンズのチラシや雑誌広告などを見ると「医師の検査・処方をうけること」だれにもわかるような大きく見やすい文字で表示すること。
◆行政に対して、目の障害などを早期に発見するためにもコンタクトレンズ購入時および定期検査に医師の診察を受けるよう、関係業者および消費者により一層の注意喚起をしてほしい。コンタクトレンズを若いうちから使用すると一生を通じてこのコンタクトレンズの使用期間がが長くなります。使用期間が長くなればなるほど眼障害がが発生する可能性は高くなります。重症な眼障害を起こした症例 SCLを使用していた19歳の男性。視力0.001も見えないほどで黒目(角膜)の中央部に潰瘍を認めました。細菌性角膜潰瘍と診断され、抗生物質の大量投与が行われました。角膜潰瘍は瘢痕治癒しましたが、0.3以上の視力は得られませんでした。19歳という若い健康な男性がどうしてこのようなひどい角膜潰瘍を起こしたのか?その原因として以下のようなことが問題視されされました。
- 1ヶ月前に眼科専門医不在のコンタクトレンズ量販店でレンズを購入
- レンズは水分をあまり多く含まない従来型SCLでした。
- 購入時に十分な説明、指導を受けませんでした。
- 装用時間は1日15時間以上で連続装用できないレンズでありながら 連続装用することも
- 調子が悪い時もレンズを外さない
- メガネをもっていない。
- 消毒は過酸化水素水消毒を使用していたが取り扱い説明書のとおりに洗浄や消毒を行わなかった。
- 使用していたレンズおよびレンズケースの確認をしたところ汚れていた。
- 定期検査を受けていなかった
このようにならないようにレンズを購入する際には眼科専門医による検査と十分な説明を受け、正しい装用とケアを行い、定期検査を必ず受けるようにします。